2017年1月に、早稲田大学エクステンションセンター八丁堀校で、「ショート・ショート小説の書き方」という全3回の講座に参加しました。
講師は、田丸 雅智(たまる まさとも)先生。1987年愛知県松山市生まれ、東大工学部、同大学院工学系研究科卒のエリートさんです。2011年に作家としてデビューされました。(田村 雅智 公式サイト:http://masatomotamaru.com/)
ショートショートの旗手といえば言わずもがなの星新一。
子どものころ、いとこの大学生のお兄ちゃんに文庫本をもらって夢中になって読んだのを覚えています。
ショートショートとは、田丸先生の定義によると「短くて不思議な話」です。
田丸先生のショートショート講座では、誰でも簡単にショートショートが書ける手法があるとのこと。
田丸先生の手法に従って、ショートショートを作ってみました。
① 不思議な言葉をつくる。
連想した言葉と別の言葉を自由に組み合わせて、普段ではちょっとあり得ない不思議な言葉を作ります。そうすると非日常への飛躍が生まれ、一気に不思議な世界に突入していけるのだそうです。
まず何の脈略もなく思いつくままに名詞を10個メモします。
例えば、
「犬」、「カレンダー」、「サッカーボール」、「鳩」、「公園」、「祭り」、「そうじ」、「商店街」、「交差点」、「金魚」
急に思いつかなければ、部屋の中をきょろきょろ見回して目に付いたものを片っ端からメモしていってもいいのです。
メモした10個の名詞の中から1つを選びます。例えば「祭り」。
名詞を選んだら、そこから連想することを書き上げていきます。
例えば「祭り」なら、
・ 伝統
・ 神輿
・ ハッスル
・ 大騒ぎ
・ 町内会
・ 夏の夜
・ 浴衣
などなど。
次がおもしろいところなのですが、「祭り」から連想したことばを、先に選出した名詞の「祭り」以外のものと組合せます。
いろいろ組み合わせてみて、寧ろ「普通でない組み合わせ」を選びます。
例えば、「神輿の金魚」、「伝統の鳩」、「大騒ぎの犬」、「町内会のサッカーボール」、「ハッスルしているカレンダー」など。
逆に「夏の夜の浴衣」なんかは普通過ぎてイマイチなわけです。
例えば今回は、この中から「大騒ぎの犬」を選んでみたことにしましょう。
② 不思議な言葉から想像を広げる
選んだ言葉、ここでは「大騒ぎの犬」から、それはどんなモノなのか、「定義」を考えてみます。ここで思いっきり空想を膨らませます。なんでもありなのです。
「お行儀を知らない、大暴れする犬。」
・・・。けっこう普通になってしまいました。でもいいのです。頭の中にイメージができることが大切なのです。言葉でなく、イラストで描いてもよいそうです。私のイメージは、アメリカのマンガ「ガーフィールド」に出てくるおバカ犬です。
簡単な定義が決まったら、次にそのもののメリットとデメリットを考えます。
<メリット>
・ 飼い主が大好き
・ 仔犬
<デメリット>
・ 家の中を散らかしまくる
これまでに考えた「定義」、「メリット」、「デメリット」をまとめます。
「飼い主が大好きな仔犬。悪気はないがお行儀ができていなくていつも大暴れする」
③ 設定を考える
物語を膨らませていきます。
(1) 主人公は誰? 私、俺、僕、男、女、少年、少女、実業家のエヌ氏、学生のアールくん
=> ここでは「大騒ぎの犬」を主人公とします。名前は「ポチ」
(2) ほかの登場人物は? 友達、先生、お父さん、お母さん、登場人物は主人公だけ
=> ここでは飼い主の花子さん、一緒に飼われている猫の「ミケ」
(3) 物語の舞台はどこ? 学校、友達の家、裏山、海辺、宇宙船、火星
=> ここではポチ、花子さん、ミケの住んでいる家とします。
(4) いつ起こったの? 昨日、ある日、一年前、百年後、夜寝る前、遊びに行ったとき
=> ここでは花子さんの帰宅時とします。
④ 想像したことを短い物語にまとめる
①~④をお話にまとめます。セリフを入れたり、登場人物の心の声を入れたり、動作を描いたりして楽しく物語を作っていきましょう。
これまで考えたことを元にして、自分自身にどんどん「それから?」「それから?」と質問しながらストーリーを作っていくのだそうです。
それでは私の作ったショートショート、「大騒ぎの犬」。それでは聞いてください。
僕の名前はポチ。花子さんの家に飼われている。花子さんに飼われているのは僕と、猫のミケだ。
僕は花子さんが大好き。
花子さんが帰ってくると嬉しくて嬉しくて、ついつい毎日大騒ぎしてしまう。
玄関の靴を蹴散らかし、マットはくしゃくしゃ、床の花びんはひっくり返すという始末。
花子さんはいつもがっかりして、「ポチ、だめねえ。ミケを見習いなさい。ミケはお利口でしょ」と言いながらミケの頭をなでる。僕は悲しくなってしまう。
ある日、ミケに相談してみた。「どうしたら君みたいにお利口になれるんだろう」
ミケは僕が初めてミケに会ったときからもうおじいちゃんで、いつもうとうと居眠りばかりしているのだけど、このときばかりは一生懸命考えて、しばらくしてから「わかったよ、教えてあげよう」と言ってくれた。
僕は嬉しくなって、ミケのようにお利口になれるよう、一生懸命にミケの言うとおりに練習してみた。
花子さんが帰ってきた。
僕はやっぱり嬉しくて嬉しくて、急いで花子さんを迎えに行った。見て、花子さん! 僕、ミケみたいにお利口になったよ!
玄関の靴を蹴散らかし、マットをくしゃくしゃにして花びんをひっくり返しながら得意になって「にゃー にゃー」
花子さんはあきれた顔をして僕の頭をなでながら言った。
「ポチ、そこじゃないのよ、ミケのお利口なところは。」
<終>
おそまつさまでした。